谷崎潤一郎

ナオミは奇妙にあんな地質が似合いました。それも真面目な着物ではいけないので、筒ッぽにしたり、パジャマのような形にしたり、ナイト・ガウンのようにしたり、反物のまま身体に巻きつけてところどころをブローチで止めたり、そうしてそんななりをしてはただ家の中を往ったり来たりして、鏡の前に立って見るとか、いろいろなポーズを写真に撮るとかして見るのです。白や、薔薇色や、薄紫の、紗のように透き徹るそれらの衣に包まれた彼女の姿は、一箇の生きた大輪の花のように美しく、「こうして御覧、ああして御覧」と云いながら、私は彼女を抱き起したり、倒したり、腰かけさせたり、歩かせたりして、何時間でも眺めていました。